美容室のカウンセリングは、仕上がりのイメージを正確に共有し、お客様の悩みや理想を丁寧に引き出す大切な工程です。
しかし、当たり前にできていると思っていても、大切な情報を聞き忘れていたり、スタッフ間で情報共有が十分に行われていなかったりすることがあります。こうした小さなズレが積み重なると、仕上がりのブレやクレームにつながり、サロン全体の信頼性にも影響を及ぼします。
そのため、カウンセリングの流れを見直し、必要な情報を確実に引き出せる体制を整えていきましょう。
ここでは、カウンセリングの質を高めるための具体的なポイントから、忙しいサロンでも実践しやすい管理方法、電子カルテを活用した業務効率化まで、現場で役立つ内容を解説します。
カウンセリングの抜け漏れで生じる課題

美容室のカウンセリングは、お客様が求めている仕上がりを正しく理解し、最適な提案と安全な施術につなげるための大切な工程です。
さらに、カウンセリングで得た情報をカルテなどに正確に残しておくことで、次回以降の施術精度を高めるという役割も担っています。
初回来店時は、カウンセリング内容がしっかり反映され、満足のいく仕上がりになることが多いでしょう。しかし、その内容がカルテに記録されていないと、次回来店時に前回の施術内容や注意点を正しく引き継げず、次のような問題が発生する可能性が高くなります。
- 前回指摘された施術を再び実施する
- 前回の仕上がりを再現できない
- 口頭のやり取りのみで事後のクレーム対応が困難になる
カウンセリングを見直す第一歩として、その不十分さがどのような問題につながるのかを明確にしておきましょう。
前回指摘された施術を再び実施する
お客様から伺った細かな要望がカルテに残っていないと、同じ失敗を繰り返してしまうことがあります。
前髪の幅や毛量調整の深さなど、わずかなニュアンスの違いでも「前回伝えたのに」と感じさせてしまうことがあり、信頼を損ねる大きな要因になります。美容サロン顧客満足調査2023では、他店に変えた理由として「前回の悩みや希望を覚えていない」が22%を占めており、カウンセリングの精度がリピート率に直接影響することが分かっています。
顧客満足調査(美容室編)|株式会社リクルート
前回の内容を覚えてもらえていないと感じた瞬間に、お客様の心が離れてしまう可能性が高くなります。こうしたトラブルを防ぐためには、施術内容や指摘事項などカウンセリングで得た情報を正確にカルテへ残しておき、再来店時に必ず確認することが必要になります。
前回の仕上がりを再現できない
お客様が再来店される理由のひとつには、前回の仕上がりに満足いただけていたことが考えられます。そのため、その期待を裏切らない再現性が求められます。
しかし、カウンセリングで必要な情報が十分に残っていない場合、同じ施術を再現することが難しくなってきます。
とくに、カラー剤の配合比率、放置時間、施術前の状態があいまいだと、微妙な違いが積み重なり、前回と同じ質感や色身を再現できなくなることがあります。
口頭のやり取りのみで事後のクレーム対応が困難になる
カウンセリング内容が口頭のみで、記録が残されていないと、再来店時に仕上がりに対する認識のズレが起きやすくなります。
例えば、「前回の明るさが良かったのに今回は違う」といったトラブルの多くは、事前の情報共有が十分に行われていないことが原因の一つです。
美容室では施術中の会話も多く、口頭で交わした細かな約束があいまいになったり、忘れられてしまったりすることも珍しくありません。そのため、クレームやお直しの対応が必要になった際、口頭の記憶だけではお客様と認識をすり合わせることが難しくなる場合があります。
認識違いを防ぐには、カウンセリング内容をカルテや書面に残し、あとから誰でも確認できる状態にしておくことが重要です。
美容室のカウンセリングは標準化で精度を高める

カウンセリングは、仕上がりのイメージを正しく共有するために欠かせない工程であり、お客様の満足度に直結する重要な時間です。
ここが十分に行われていないと、希望したスタイルとのわずかなズレがそのまま仕上がりに表れ、思っていた髪型と違うという不満を招くことがあります。そのため、仕上がりの再現性を高め、毎回期待に応えられるようにするには、カウンセリングの精度を高めて認識を揃えることが欠かせません。
質問項目のテンプレート化で聞き漏れを防ぐ
カウンセリングでは、その悩みの背景にある気持ちを丁寧に聞き取り、どのような状態を理想としているかを引き出すことが求められます。
例えば、20代はカラーの色持ちやデザイン性、30〜40代はボリュームやツヤ、50代以降は白髪や髪質変化など、それぞれに異なる悩みが存在します。リピート率や顧客満足度を高めるためには、こうした個々の違いを理解しながら、要望を正確に把握するカウンセリングが欠かせません。
そのために活用したいのが、質問項目を整理したカウンセリングシートです。
- 個人情報や髪の悩み
- 理想の雰囲気
- 普段のお手入れ方法
- アレルギーの有無
- 接客に関する希望
- 美容室への要望
など、基本的な項目を一つのフォーマットにまとめておくと、聞き漏れが起こりにくくなります。誰が担当しても安定した質でカウンセリングが進められるようになり、施術の精度が自然と高まっていきます。
カルテの記載内容を統一して情報の検索性を高める
カルテは、お客様の過去の施術内容や希望の内容を正確に把握するための大切な情報源です。
しかし、記載方法がスタッフごとに異なると、読み取りに時間がかかり、必要な情報が見つけにくくなることがあります。こうした小さなばらつきは、再現性の低下や仕上がりのズレにつながるため、店舗全体で記載内容を統一することが重要です。
例えば、以下のような情報をテンプレート化しておくと、カルテの内容が統一され、スタッフ間での情報共有がスムーズになります。
- 髪質毛量
- カラー剤やパーマ液の種類
- 自宅でのケア方法
- 施術中の反応や注意点
また、紹介が多い方や店販商品がお好きな方、遅刻しやすいお客様なども記載しておくと良いでしょう。
カルテが整備されていると、お客様との会話の精度も上がります。前回の内容をすぐに振り返れることで、「この前より扱いやすかったですか」「色味の持ちはいかがでしたか」といった具体的なヒアリングができ、丁寧な接客へとつながります。
店舗としての信頼性を高めるためにも、情報の統一は欠かせない取り組みといえます。
カウンセリング時間を必須工程として組み込む
カウンセリングは仕上がりを左右する重要な工程にもかかわらず、忙しくなるとつい時間を削ってしまいがちです。
しかし、確認不足のまま施術に入ると、仕上がりのズレややり直しにつながり、お客様の満足度を大きく下げることがあります。調査データでもその重要性は裏付けられています。
美容サロン顧客満足調査2023では、美容室を「また利用したい」と感じた理由として、「カウンセリング」が32.9%でトップ3に入り、「話や希望相談を聞いてくれる」が45.8%と最も高い割合を示しました。
顧客満足調査(美容室編)|株式会社リクルート
予約枠の中に最初から一定の時間を確保し、スタッフ全員が同じ基準で運用できるようにしておくと、どのような状況でも安定した接客が可能になります。
特に初回や普段と大きくイメージを変えるときなど、情報量が増えるケースでは、丁寧なヒアリングが仕上がりの精度を大きく左右します。
説明内容を書面化してトラブルを防ぐ
カウンセリングでの説明を口頭だけに頼っていると、施術後に「聞いていない」「思っていた内容と違う」という認識のズレが生まれやすくなります。
特に料金や施術工程は、後のトラブルにつながる大きな要因です。こうした誤解を防ぐためには、説明内容をあらかじめ書面化し、施術前にお客様と共有しておく必要があります。書面化する際は、ブリーチ・カラー・カット・トリートメントなどのメニューごとの料金、合計金額を明確に記載します。
さらに、施術後のお直しに関する取り決めもわかりやすく示しておきます。例えば、「お直しは1週間以内」「明らかな施術ミスの場合に限る」といった条件を明記し、双方が同じ理解を持てるようにしておくと安心です。
敏感肌や薬剤への不安がある方には、事前に施術後の注意点を明示しておくことで、トラブル防止だけでなくクレーム発生時の早期対応が可能になります。
これらの内容をチェックボックス形式で確認し、同意を得るしくみを取り入れることで、説明漏れが起きにくくなり、スタッフ側も安心して施術に集中できます。

カウンセリングの具体的な流れと質問項目の設計方法

カウンセリングは、仕上がりのイメージをすり合わせるための最も重要なポイントです。
ここからは、美容室で広く用いられているカウンセリングの基本的な流れをご紹介します。
【ヒアリング】悩み・理想・制約を聞き出す10項目の質問設計
以下は、カウンセリングの際、聞き漏れを防ぎ、施術の判断に必要な情報を整理するための項目です。
- 希望・理想のヘアスタイル
- 目指したい雰囲気やなりたいイメージ
- 現在の髪の悩み(広がり・うねり・ボリュームなど)
- 過去の施術内容(良かった点・合わなかった点)
- 日常のスタイリング方法
- 自宅でのヘアケア習慣(使用アイテム・頻度など)
- 接客についての希望(距離感・話す量・好みの接客トーン)
- 髪質の特徴やダメージの状態
- 予算や来店周期
- 薬剤の反応やアレルギーの有無
これらは一見すると基本的な項目ですが、忙しい日ほど聞き漏れが起きやすい内容でもあります。改めて整理し、確実に確認できるようにしておきましょう。
初回は網羅的に、再来は変化点を中心に質問する
初回のカウンセリングでは、お客様の髪の状態や生活習慣、これまでの施術経験などできるだけ幅広く質問し、全体像をつかむように進めることが大切です。
髪質やダメージの度合い、普段のスタイリング方法まで丁寧に伺うことで、その人に合った施術プランを組み立てやすくなります。
また、2回目以降の来店時は、前回との「変化」を中心に聞くことで、カウンセリングがより実用的になります。「色持ちはどうだったか」「扱いやすさは変わったか」「前回気になった点はあるか」など、具体的な変化を確認することで、施術の再現性が高まり、満足度の向上につながります。
対応できない施術はリスク説明と代替案を提示する
カウンセリングでは、お客様の希望をできる限り叶えたいという思いがある一方で、髪の状態や過去の施術履歴によっては、希望のメニューを安全に行えない場面があります。
無理な施術をそのまま進めてしまうと、ダメージの悪化や色ムラ、仕上がりの不一致といったトラブルにつながりかねません。まずは、なぜ今回は難しいのかという理由をていねいに説明し、現状で想定されるリスクを正しく伝えることが大切です。
対応できない施術をただ断るのではなく、髪の状態を把握しながら理想に近づけるための選択肢を提示することが、信頼につながるポイントです。
【提案】悩みから費用まで順序立てて施術内容を説明する
カウンセリングの内容をもとに、どんな髪型が似合うのか、どこを改善すると扱いやすくなるのかを丁寧に言葉にしていきます。
お客様の髪質や骨格、そして普段の過ごし方まで踏まえて提案できると、安心感が生まれ、仕上がりへの期待も高まります。
例えば、「朝はスタイリングに時間をかけられない」という方には、乾かすだけで形が整うスタイルや、忙しい日でも扱いやすいデザインを案内すると喜ばれます。理想に寄り添いつつ、その方の生活に馴染む提案ができると、プロとしての視点を感じてもらいやすくなります。
また、言葉だけでイメージを伝えようとすると、どうしても認識のズレが起きやすくなります。「長め」「軽く」「暗め」などは、人によって感じ方が大きく異なるためです。
認識のズレを防ぐためにも、写真や画像を使って仕上がりのイメージを共有しておくことが大切です。視覚で確認すると、双方のイメージが揃いやすくなり、安心して施術に進んでいただけます。
さらに、施術内容を伝えた後は、料金の内訳について説明します。基本メニューの金額に加えて、オプションや追加が必要な場合は、その理由と一緒に説明すると不安を減らせます。
事前に丁寧に説明しておくことで、会計時の誤解を防ぎ、信頼感のある接客につながります。
【記録】施術結果と次回の狙いを記録して引き継ぐ
カウンセリングや施術で得た情報は、その日だけで完結するものではなく、次回以降の施術にも生かされます。
カルテに情報を残しておけば、担当が変わっても前回の色味や薬剤、髪の状態の変化を正確に把握できます。そのため、必要な確認作業を効率化しつつ、安定した品質で施術を提供し続けることができます。
また、記録を見返しながらお客様と会話することで、「覚えていてくれた」という安心感が生まれ、より強い信頼関係の構築にもつながります。
こうした管理をよりスムーズにしてくれるのが電子カルテです。
施術履歴や写真、注意点を簡単に保存でき、必要な情報をすぐに検索できます。紙カルテのように当日の記録を探す手間も大きく減るため、忙しい日でも準備を効率良く進められる点が大きなメリットです。
ビューティーパレットの一元管理で情報共有を効率化

サロンワークでは、カルテの捜索や予約情報の確認、スタッフ間の連絡など、小さな作業に意外と時間を取られることがあります。
ビューティーパレットは、こうした日常の小さなロスを減らし、接客の質を高めるために作られたタブレット型の電子カルテです。写真に直接書き込みながらスタイルを共有したり、必要な情報を瞬時に呼び出したりできるため、フロント業務の時間短縮や連絡ミスの防止に大きな効果があります。
手持ちのタブレットで手軽に導入
ビューティーパレットは、手書きのように自由に書き込める操作性が特徴です。
写真や画像の上にフリーハンドでメモを残したり、気になるポイントに丸印をつけたりできるため、文字だけでは伝わらない感覚的な情報も正確に共有できます。仕上がりのイメージや注意点がひと目で分かり、スタッフ間の情報共有がとてもスムーズになります。
また、ヘアサロン用・ネイルサロン用など、業種に合わせた台紙を自由に取り込めることも利点のひとつです。
これまで紙のカルテに手書きしていた感覚のまま使えるため、パソコンが苦手なスタッフでも扱いやすく、アナログからデジタルへの移行に戸惑う心配がありません。画面をタッチして入力するだけなので、教育コストも抑えられます。
さらに、専用の端末を購入する必要がなく、市販のタブレットがそのまま使える点も導入しやすいポイントです。
すでに店舗にあるタブレットを活用できれば初期費用も抑えられ、無理なく電子カルテを取り入れることができます。
美容室・サロン専用の電子カルテ「ビューティーパレット」
POS連携で予約情報と施術履歴を自動で紐づけ
ビューティーパレットは、POSシステムと連動することで業務効率を大きく高められます。
カルテの閲覧だけでなく、予約台帳や受付状況をリアルタイムで確認できるため、その場で必要な情報にすぐアクセスできます。受付まで戻って確認する手間がなくなり、忙しい時間帯でもスムーズに対応できる点が大きな魅力です。
また、タブレット側で入力した施術内容や注意点は、POS側にもそのまま反映されます。逆に、POSの予約情報や来店履歴をビューティーパレットで確認することもでき、双方で情報を行き来できる仕組みです。担当者別・店舗別・全体の受付状況を一覧で把握できるため、スタッフ全員が同じ情報を共有しながら業務を進められます。
お客様ごとの予約内容やメニューの確認、変更、追加入力もタブレット上で完結します。施術に入りながらでも必要な情報がすぐに確認できるため、お客様を待たせることなく、落ち着いた対応ができるようになります。
サロン特化型のPOSシステム「サロエボ」
まとめ
カウンセリングは、美容室における仕上がりの質を左右する大切な工程です。
聞き漏れのないヒアリング、わかりやすい提案、丁寧な記録の三つが揃うだけで、お客様の満足度は大きく向上します。さらに、ビューティーパレットのような電子カルテを活用すれば、情報共有の精度が高まり、サロン全体の接客力を底上げできます。
特に、写真への書き込みやPOSとの連携は、スタッフ間の連絡ミスを防ぎ、作業時間のロスを大幅に削減するのに効果的です。カウンセリングの流れを見直すことは難しそうに感じますが、実は今日からすぐに始められる取り組みです。
質問項目の整理、記録方法の工夫、ツールの導入など、できるところから少しずつ整えてみてください。
