美容室におけるキャッシュレス決済の導入は、今や「あると便利」から「ないと不便」へと変わりつつあります。
特に若年層を中心に現金を持ち歩かない人が増加している昨今では、キャッシュレスに未対応だと、不便さを感じるお客様も多くなります。結果、新規顧客の来店機会減少や既存顧客のリピート率の低下が起こりやすく、売上減少につながる可能性があるため、キャッシュレス決済はなるべく早いタイミングで導入することが推奨されます。
ただし、キャッシュレス決済の導入では、決済手数料や入金サイクルという点に注意が必要です。また、キャッシュレス決済のサービスには複数の種類があるため、手数料率や入金タイミングを事前に確認し、適切な決済サービスを選択しましょう。
美容室でキャッシュレス決済の導入が進む背景
美容業界では、次のような背景からキャッシュレス決済の導入が進んでいます。
- 現金を持ち歩かない顧客層の増加
- 美容業界におけるキャッシュレス標準化への対応
上記の要因が美容室経営に与える影響について、それぞれ詳しく解説します。
現金を持ち歩かない顧客層の増加
経済産業省は、キャッシュレス決済比率を2025年までに40%程度にするという政府目標を掲げており、関係省庁と連携して取り組みを進めています。
この政策は、生産性向上や消費の活性化、決済業務の効率化を図り、日本経済の成長につなげることを目的としています。政策の推進により、2024年のキャッシュレス決済比率は42.8%に達し、政府目標を前倒しで達成しました。多くの業界でキャッシュレス決済の普及が進んだ結果、日常的に現金を持ち歩かない人が大幅に増えています。
政府はさらに将来的にキャッシュレス比率80%の実現を目指しており、必要なインフラ整備や制度改正も進行中です。国の方針と社会の実態は、美容業界においても無視できない変化であり、店舗選びにおける「キャッシュレス対応」は今や基本条件の一つとなりつつあります。
社会全体のキャッシュレス化の流れを受けて、美容室においても顧客満足度の向上と競争力維持のために、キャッシュレス決済の導入が急務となっています。
美容業界におけるキャッシュレス標準化への対応
美容室におけるキャッシュレス決済は、今や「差別化の手段」ではなく「当たり前のサービス」となりつつあります。
これは、他店との競争による導入ではなく、業界全体が一定の水準でキャッシュレスに対応し始めていることが背景にあります。
また、キャッシュレス導入は、単なる決済手段の拡充にとどまらず、客単価や売上アップにも好影響を与えていることが示されています。顧客心理の面でも、「手元に現金がないから遠慮する」といった心理的な壁が下がり、結果的にサービス利用の幅が広がっていることがうかがえます。
実際に、SBペイメントサービス株式会社の調査によれば、キャッシュレス決済に対応していないことが原因で支払いをやめた経験がある人は全体で43.2%、20代では59.5%となっています。
参考:実店舗でのキャッシュレス決済の利用実態調査|SBペイメントサービス株式会社
こうした実態を受け、キャッシュレス決済は美容業界の基本装備として定着しつつあり、未対応のままでいることがむしろ不利な状況を招く可能性もあります。キャッシュレスは、顧客満足度の向上と経営効率化を両立する手段として、今後ますます重要性を増していくでしょう。
美容室で導入できる主なキャッシュレス決済の種類
美容室で導入可能なキャッシュレス決済の種類と、それぞれの特徴やメリットについて解説します。
決済手段 | 主なブランド例 | 特徴 | 導入方法 | 初期費用・手数料の目安 |
---|---|---|---|---|
クレジットカード | Visa、Mastercard、JCBなど | 利用率が高く信頼性がある高単価にも対応しやすい | 専用端末またはタブレット+カードリーダー | 初期費用数万円〜、手数料1.98〜3.5%前後 |
QRコード決済 | PayPay、楽天ペイなど | スマホで簡単に決済できる若年層に人気 | 印刷したQRコードの掲示またはタブレット操作 | 無料〜、手数料1.6〜3%前後 |
電子マネー | Suica、PASMO、iD、QUICPayなど | タッチで即決済できる通勤客との相性が良い | クレジット端末またはFelica対応端末 | 初期費用高め、手数料2〜3%前後 |
クレジットカード
最も一般的なキャッシュレス手段として、美容室でも広く導入されているのがクレジットカード決済です。
Visa、Mastercard、JCBなどの主要ブランドに対応していれば、幅広い顧客のニーズに応えられます。クレジットカードの強みは、利用者の多さと信頼性です。とくに30代以上の顧客層ではカード払いの習慣が定着しており、高単価メニューや複数サービスの同時利用においても、スムーズな決済が可能となります。
また、顧客はポイント還元や分割払いといった付帯サービスを活用できるため、心理的ハードルが下がりやすく、結果として客単価の上昇にもつながる可能性があります。ただし、導入にあたっては、決済手数料やカード会社との契約内容の確認が必要です。
特に小規模サロンでは、売上規模に応じたコスト計算を事前に行い、自店舗に適した決済端末やサービスを選ぶことが重要です。
なお、クレジットカード会社との加盟店契約では、利用金額による制限を設けることや、決済手数料を顧客に上乗せすることが禁止されています。時間帯による利用制限(「ランチタイムはクレジットカードお断り」など)も加盟店規約違反に該当するため注意が必要です。
QRコード
近年、急速に普及しているのがQRコードによるスマホ決済です。
PayPayや楽天ペイ、d払いなどが代表的で、若年層を中心に利用者が増えています。スマートフォンさえあれば現金もカードも不要で、スキャンするだけで決済が完了する手軽さが支持されています。
また、専用端末を必要とせず、印刷したQRコードを提示するだけで決済可能なサービスも多く、初期費用が比較的安く抑えられるため、導入のハードルが低い点が魅力です。QRコード決済は、サービスによって入金サイクルや手数料が異なるため、複数社の比較検討が欠かせません。
電子マネー
SuicaやPASMOなどの交通系ICカードをはじめ、iDやQUICPayなどの電子マネーも、美容室で利用されるキャッシュレス手段の一つです。特に駅近や商業施設内にある店舗では、通勤・通学途中の来店が多く、こうした電子マネーによる支払いが便利だと感じるお客様が多くなっています。
端末にタッチするだけで決済が完了するスピードの早さが特徴です。会計にかかる時間が短縮され、お客様にもスタッフにもストレスが少なくなります。ただし、導入には専用の端末やFelica(フェリカ)対応機器が必要になる場合があり、初期費用や手数料の水準もクレジットカード並みにかかるケースがあります。
また、電子マネーの種類によっては地域や年齢層によって利用率に差があるため、実際に使われている決済手段を事前に確認しておくとよいでしょう。
美容室がキャッシュレスの導入で得られるメリット
キャッシュレス決済の導入で美容室が得られる主なメリットは以下の4つです。
- 購買心理の変化で客単価アップ
- 若年層・海外観光客など新規顧客層の開拓
- 会計業務の効率化
- 現金に関するリスクの軽減とセキュリティ向上
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
購買心理の変化で客単価アップ
自宅でのヘアケアに関するニーズは年々高まっており、美容室での店販商品の需要が拡大しています。
実際に株式会社リクルートの調査では、女性1人あたりの店販購入総額が5年連続で上昇し続けており、2023年には12,424円に達しました。
参考:美容センサス2024年上期<美容室編>|株式会社リクルート
しかし、特に店販では、その場で美容師と相談して決めることが多いため、購入を前提に来店するケースは多くありません。現金払いのみの対応の場合、購入したくても手持ちの現金が不足していれば購入できず、機会損失につながることがあります。
キャッシュレス決済の導入により、このような購買機会をより確実に売上につなげることができます。
若年層・海外観光客など新規顧客層の開拓
キャッシュレス対応は、既存顧客の利便性を高めるだけでなく、新しい顧客層の来店を促す重要な施策にもなります。
とくにスマートフォン決済が生活の一部となっている若年層や、訪日観光客にとっては、キャッシュレスの可否が「お店を選ぶ基準」となることも少なくありません。また、インバウンド需要への対応も進んでおり、PayPayではAlipay+を介して、中国・韓国・台湾・タイ・マレーシア・フィリピンなど、10億人以上の海外キャッシュレスユーザーに対応できる環境を整備しています。
外国人観光客が日本の美容室や飲食店でも、慣れた決済アプリをそのまま使えるようになっており、地方の小規模店舗でもインバウンド顧客を逃さない体制が可能となっています。美容室にとって、キャッシュレス環境を整えることは、若年層や訪日観光客といった「これからの主力顧客」に自然に選ばれる土台を築くことにつながります。
キャッシュレス対応しているかどうかが、そのまま「来店されるかどうか」の分かれ目になり得るのです。
会計業務の効率化
キャッシュレス決済の導入は、お客様だけでなく店舗スタッフにとっても以下のような利点があります。
改善項目 | 具体的な効果 |
---|---|
レジ業務の効率化 | 現金のやり取りが不要になり、会計時間の短縮と混雑時の対応力向上 |
業務の正確性向上 | 釣り銭準備や金額確認、締め作業の削減による手作業ミスの防止 |
業務負担の軽減 | 現金集計作業とお釣り管理からの解放による大幅な負担軽減 |
売上管理の自動化 | 決済内容の自動記録により売上集計・日報作成の効率化とリアルタイム確認 |
キャッシュレス決済による業務の効率化は、限られた時間や人員を有効に活かす手段として、特に中小規模の美容室においては、日々の運営を支える大きな柱となるでしょう。
現金に関するリスクの軽減とセキュリティ向上
キャッシュレス決済により実現できるのが、盗難リスクや現金管理に関わるトラブルの軽減です。
釣り銭の渡し間違いや売上金の紛失、レジ内の金額の誤差などは、現金を扱う美容室で頻繁に起こりやすい課題の一つです。キャッシュレス決済を導入することで、現金の取り扱いが減るため、問題の発生を抑えることが可能です。
美容室でキャッシュレス決済を導入するデメリット
一方で、キャッシュレス決済の導入では以下のデメリットもあるため注意が必要です。
- システム利用料・決済手数料のコストが発生
- 入金タイミングの制約
- システム障害・通信トラブルのリスク
- スタッフ教育の必要性
キャッシュレス決済の運営を円滑に行うためにも、導入前に確認しておきましょう。
システム利用料・決済手数料のコストが発生
キャッシュレス決済を導入する際には、初期費用や手数料など、一定のコストが発生します。
特にクレジットカード決済では、売上金額の1.9〜3.5%前後が決済手数料として差し引かれるケースが一般的です。加えて、決済端末やレシートプリンターの導入費用、月額利用料がかかることもあります。キャッシュレス決済の導入や運用で発生するコストは、売上規模の小さいサロンにとっては利益に直結するため、慎重な検討が必要です。
一方で、QRコード決済の中には、導入費用が無料または低価格に抑えられているサービスもあります。費用だけで判断せず、顧客層のニーズや使いやすさ、サポート体制なども含めて、総合的に比較することが大切です。
入金タイミングの制約
キャッシュレス決済では、売上金が即日手元に入るわけではありません。決済代行会社ごとに入金スケジュールが定められており、現金払いとは異なる運転資金の管理が求められます。
例えば、JCBでは、「当月末締め・最短翌々営業日振込」が基本です。具体的には、1日〜15日までの売上は15日締めで当月末に振込、16日〜月末までの売上は月末締めで翌月15日に振り込まれるスケジュールとなっています。
これは「ショッピング1回払い・分割払い・リボ払い・ギフトカード払い」などに共通する取り扱いです。
参考:店頭販売加盟店のご契約|株式会社ジェーシービー
締め日から実際の振込日までに時間差があるため、仕入れや家賃など支払日との調整が必要になる場合もあります。特に、毎月の資金繰りに余裕がないサロンでは、入金タイミングを把握しないままキャッシュレス比率を上げると、予期せぬ資金不足に陥るおそれもあります。
運用を始める前に、各決済手段の「締め日・振込日・最低入金額・手数料」などを確認し、自店舗の資金の流れに合った仕組みを選ぶことが重要です。
システム障害・通信トラブルのリスク
キャッシュレス決済はインターネット回線やシステムに依存した決済方法です。
通信環境の不具合や決済事業者側の障害が発生すると、支払いが完了できなくなるリスクがあります。特に、モバイルWi-Fiや店舗の回線速度が安定していない場合、決済がスムーズに進まないケースがあるため注意が必要です。
実際に、過去には大手スマホ決済サービスにおいて一時的なアクセス集中やサーバーダウンにより全国的に利用不能となった例も報告されています。その影響で、店舗では会計が滞り、お客様に現金支払いをお願いしたり、再来店を依頼せざるを得なかった事例もあります。
また、QRコード決済を導入している店舗では、タブレットやスマートフォンの充電切れ、アプリの不具合など機器側のトラブルも少なくありません。決済のトラブルに備えるには、店舗側で予備の通信回線や決済手段(現金・他のカードブランド)を準備しておくことが大切です。
トラブル発生時の対応マニュアルなども事前に整備しておき、スタッフがすぐに行動できる状態にしておくことで、顧客満足度の低下を防げます。
スタッフ教育の必要性
キャッシュレス決済を導入するにあたっては、スタッフ全員が決済方法を正しく理解し、スムーズに対応できるように教育しておくことが欠かせません。とくに複数の決済手段を扱う場合、それぞれの操作方法や注意点に違いがあるため、事前の準備が重要です。
例えば、クレジットカードとQRコード決済では、読み取り機器や画面の操作手順が異なります。初めて来店したお客様から「○○で支払えますか?」と尋ねられた際に、スタッフが即座に対応できなければ、店舗の信頼性にも関わります。会計時のトラブルに備え、対応マニュアルの整備や、定期的な研修・シミュレーションが効果的です。特に新人スタッフの受け入れ時にはOJTを徹底し、現場での混乱を防ぐことが重要です。
キャッシュレス決済は、導入だけでなく、スタッフが「使いこなせる」体制を整えることで、そのメリットを最大限に引き出せます。顧客対応の質を保つためにも、スタッフ教育は不可欠です。
サロエボで美容室の効率的なキャッシュレス運営を実現
美容室にキャッシュレス決済を導入する際におすすめなのが「サロエボ」です。
サロエボは、クレジットカードやQRコード決済などの多様なキャッシュレス決済に対応しています。さらに、予約管理、電子カルテ、売上分析、販促アプリなど、美容室運営に必要な機能を完全一元管理できるサロン特化型POSシステムです。
サロエボを導入することで、お客様の希望に合わせて柔軟に支払い方法を選べるため、現場でのスムーズな対応が可能です。
また、予約の受付から会計、売上の管理までを一つのシステムでまとめて行えるので、バラバラになりがちな業務を効率化し、スタッフの負担軽減と顧客満足度の向上を同時に実現できます。
多様な決済に対応
サロエボは、クレジットカードやQRコード、電子マネーなど、よく使われているキャッシュレス決済のほとんどに対応している美容室専用のレジシステムです。
お客様の希望に合わせて柔軟に支払い方法を選べるので、現場でもスムーズに対応できます。さらに、サロエボは予約の受付から会計、売上の管理までを一つのシステムでまとめて行えるのが大きな特長です。LINE公式アカウントとの連携も可能で、LINEからの予約情報をそのまま反映することもできます。
また、予約を一元管理できる予約管理システム「かんざし」や美容室・サロン専用の電子カルテ「ビューティーパレット」と連携すれば、ホットペッパービューティーや楽天ビューティーなど複数の予約サイトを一括で管理できるようになります。バラバラになりがちな予約の確認やダブルブッキングの防止も、サロエボを通じてシンプルにまとめることができます。
予約受付・顧客対応・会計・売上管理といった毎日の業務を、なるべく少ない操作で済ませたい美容室にとって、使いやすさと機能のバランスが取れたシステムといえるでしょう。
会計ソフト「freee」との連携で経理業務を効率化
サロエボは、クラウド会計ソフト「freee(フリー)」と連携できるため、日々の売上データや会計情報を、自動でfreeeに取り込めます。レジ締め作業で数字の入力が不要になるので、経理の手間を減らせます。
売上の内容はリアルタイムで記録され、取引ごとに自動で仕分けされるため、帳簿付けや月末の集計もシンプルです。特に個人経営の美容室や、経理に不慣れなスタッフしかいない店舗でも、作業ミスを減らしながら正確な管理ができます。
また、freeeは確定申告にも対応しているため、日頃からサロエボと連携させておけば、年度末の処理もスムーズに進みます。領収書の整理や仕訳の手間に悩まされていた方には、心強い機能といえるでしょう。日々の会計業務を効率よく、正確にこなしたい方にとって、サロエボとfreeeの組み合わせは非常に便利です。
まとめ
美容業界全体でキャッシュレス決済が標準化される中、未対応の店舗は「時代遅れ」との印象を与えかねません。
顧客の利便性と経営の競争力維持のために、早急な対応が求められています。ただし、キャッシュレス決済の導入では、手数料や入金サイクルの制約、通信環境への依存、スタッフ教育の必要性など、導入前に把握しておきたい注意点もあります。
そのため、店舗の業態や規模に合わせて、最適なサービスを見極めることが成功のポイントです。導入後の運用をスムーズに行うには、サロエボのように予約から会計・顧客管理までを一つにまとめられるシステムを活用するのも有効です。
かんざしやビューティーパレット、freeeとの連携することで、予約の一元管理や会計処理の自動化も実現できます。
キャッシュレス決済の導入は、顧客満足と経営の安定を両立させるための大切な手段の一つです。サロンの未来を見据えて、今できる一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。