近年、日本社会全体で、業種を問わずDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める動きが活発になっています。
DXは、データやデジタル技術を使って、仕事の進め方やサービスの質を大きく変えていく取り組みを指します。日本でも経済産業省がこの取り組みを推進しており、多くの企業で実践が進んでいます。
美容室業界においては、全国で25万店を超え、競争は一段と激しくなっています。また、お客さまの予約方法は多様化し、スタッフの働き方も変わりつつある中で、限られた人数で日々の業務を正確に回すことが課題になることもあります。
人手に頼った運営だけでは対応が難しくなる中、業務を効率化しサービスの質を維持するためにDXが欠かせない状況になっています。
ただし、ツールやシステムの導入が必ずしも効率化につながるとは限らず、運用次第では負担が増えることもあります。
DXで成果を出すためにも、導入前に業務の進め方を見直しておきましょう。
美容室経営でDXが求められる背景

美容室経営でDXが求められる背景には、現場の運営や経営環境の変化が関係しています。
ここでは、代表的な理由を3つ取り上げます。
- 人手不足により従来の運営が成り立ちにくくなっている
- 紙や個別管理では対応しきれなくなっている
- 経営判断に求められる精度が高まっている
それぞれのポイントについて順番に解説していきます。
人手不足により従来の運営が成り立ちにくくなっている
美容室経営において、人手不足は長く続く大きな課題です。
近年は美容師免許の取得者自体が増えているにもかかわらず、現場で働く人が十分に増えていない状況が続いています。
ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、免許を持ちながら就業しない人の割合は次のとおりです。
| 年度 | 未就業者の割合 |
|---|---|
| 2021年 | 18.7% |
| 2025年(見込み) | 21.4% |
資格を取得しても、美容師として働かないという選択をする人が増えており、サロン側の採用難をさらに進める要因となっています。
一方で、美容師の離職率はここ数年で改善がみられています。
- 過去5年のおおよその離職率:48%前後
- 2025年の離職率:45.7%(ここ5年で最も低い)
離職率が下がった背景には、福利厚生の見直しや早期デビュー制度の普及など、サロン側の環境改善が進んでいる点が影響しているとみられます。
それでも、未就業者の増加という別の問題が続くことで、結果として現場のスタッフ数は不足しやすい状態が続いています。
こうした状況の中、多くの美容室では限られた人数での運営が当たり前になり、予約対応や電話対応、会計、カルテ管理などの業務がスタッフの負担になりやすくなっています。
とくに2〜3人規模の小規模サロンでは、わずかな手間の増加が運営全体の悪化に直結することもあります。
このような環境だからこそ、業務をできるだけデジタル化し、スタッフが施術に集中できる体制をつくる必要があります。
紙や個別管理では対応しきれなくなっている
美容室では長く紙の予約表やカルテが使われてきましたが、来店ペースやメニューの種類が増えた今、紙だけでは管理しきれない場面が増えています。
情報が分散すると確認に手間がかかり、結果として接客の質やスタッフの動きにも影響が出やすくなります。
紙管理で起こりやすい課題としては、次のような点があります。
- 予約変更のたびに書き換えが必要で、スタッフの負担になりやすい
- 電話・店頭・SNSなど複数の予約ルートをまとめるのがむずかしい
- 施術履歴や薬剤の情報がスタッフごとにバラつきやすい
- 情報共有に時間がかかり、お客さま対応のスピードが落ちる
予約とカルテが別で管理されている場合、必要な情報を見つけるだけで時間が取られます。
来店周期や仕上がりの好み、アレルギー情報などがすぐ取り出せないと、施術の精度や提案力にも影響します。
さらに紙のカルテは保管スペースが必要になり、探す手間や管理の負担も増えていきます。
スタッフが入れ替わった際にも引き継ぎに時間がかかり、運営が滞る原因になります。
このように、紙で「記録を残す」ことはできても、「情報を活用する」には限界があります。
店舗の規模に関わらず、業務を正確かつスムーズに進めるためには、デジタルで情報を一元化し、必要なときにすぐに使える状態に整えることが求められています。
経営判断に求められる精度が高まっている
美容室の予約は、年代によって大きく変化しています。全国美容製造者協会の調査では、オンライン予約が主流になりつつあることが示されています。
まず、15~79歳の幅広い年代で最も利用されている予約手段はホットペッパービューティーで、全体の36.6%を占めています。
とくに30代以下では、ホットペッパービューティーの利用が半数を超えており、オンラインの重要性が高まっています。
一方で、電話予約は年々少なくなっています。全体では26.9%から22.2%まで下がっているものの、年代によって違いが見られます。
- 20代~30代:およそ1割
- 60代~70代:およそ3割
年代が上がるほど電話を利用する割合が高く、若い世代はオンライン予約が中心になっていることが分かります。
また、若い世代の特徴として、予約の入り口が多様化している点が挙げられます。全体で見ると、次の3つが美容室選びの主な入り口になっています。
| 順位 | 予約導線 | 割合 |
|---|---|---|
| 1位 | 美容室予約サイト | 36.1% |
| 2位 | 友人・知人のすすめ | 22.0% |
| 3位 | InstagramなどのSNS | 20.3% |
特に10代はSNS経由の比率が他の年代より高く、Instagram・YouTube・TikTokから店舗を見つけるケースが目立っています。
このように、年代や生活スタイルによって予約の入り口が大きく異なるため、どの経路からお客さまがきているかを把握することが、経営判断の精度に直結します。
広告費の配分や予約管理の方法を誤ると、サロンの成長スピードに影響が出てしまいます。

美容室DXで活用される主要なシステム・ツール

美容室のDXを進めるためには、目的に合わせた適切なツールの導入が欠かせません。
日々の業務で負担が大きい部分をシステム化することで、スタッフの作業時間を減らしながら、お客さまへのサービスの質を安定させることができます。
とくにサロン運営と相性の良い主要なツールについて、次の3つの観点から整理して紹介します。
- 予約管理システム・顧客管理(CRM)
- POSレジ・売上分析システム
- 電子カルテ・施術履歴のデータ化
予約管理システム・顧客管理(CRM)
予約管理システムと並んで、美容室DXの中心になるのが「CRM(顧客管理システム)」です。
CRMとは、お客さまの情報をひとつにまとめ、スタッフ全員が共有しながら接客の質を安定させるための仕組みのことです。予約や来店履歴とあわせて情報を確認できるため、毎日の対応がスムーズになります。
美容室で扱う顧客情報は、想像以上に多くの項目があります。CRMを導入すると、散らばっていた情報が整理され、必要なときにすぐ確認できるようになります。
管理しやすくなる情報には、次のようなものがあります。
- 氏名や連絡先
- 来店履歴
- その日の施術内容
- カラー配合や使用した商材
- 商品の購入履歴
- 仕上がりの好みや注意点
紙のカルテを探す手間がなくなり、スタッフ同士の引き継ぎもスムーズになります。担当者が変わった場合でも一定のサービス品質を保てることは、サロンにとって大きな安心材料です。
CRMは、お客さま情報を整理し、毎日の接客の基盤を整える役割を担います。
POSレジ・売上分析システム
POSレジは、会計作業をスムーズにするだけでなく、売上データを自動で蓄積してくれるため、経営判断に必要な情報を手早く確認できる重要なシステムです。
手作業での集計やレジ締めの負担が減り、施術以外の業務にかかる時間を大きく短縮できます。
POSレジを導入すると、次のような情報が自動的に整理されます。
- 売上総額や支払方法の内訳
- スタッフ別の売上や生産性
- メニューごとの売上構成
- 客単価や来店頻度の推移
これらのデータは、紙の台帳や手書きのメモでは管理が追いつきにくい部分です。
POSではリアルタイムで集計されるため、必要なときにすぐ数字を確認でき、日々の判断にも役立ちます。
メニューの割合や客単価の変化が見えることで、どの施術が人気なのか、どの時間帯に予約が集中するのかが分かりやすくなります。
スタッフの得意分野や生産性も把握しやすくなり、シフト組みや教育の方針にも活かせます。
とくに小規模サロンでは、オーナーが施術から会計、在庫管理まで担っているケースが多く、POSの自動集計機能は大きな助けになります。
締め作業の時間が短くなるだけでなく、数字を基にした計画が立てやすくなるため、無理のないサロン経営がしやすくなります。
電子カルテ・施術履歴のデータ化
電子カルテは、施術内容を正確に残しながら、スタッフ全員が同じ情報を共有しやすくする仕組みです。
カラー配合や工程のメモ、スタイル写真など、紙では管理が難しい情報まで記録でき、仕上がりの再現性を高めることに役立ちます。
記録できる主な情報には次のようなものがあります。
- カラー剤の配合比や放置時間
- パーマ・縮毛矯正の工程や薬剤情報
- 施術前後のスタイル写真
- 髪質やダメージの変化メモ
- 過去の提案内容や注意点
最近は、紙カルテのようにタブレットへ手書きで直接書き込めるタイプの電子カルテも増えており、従来の書き方に慣れているスタッフでも使いやすくなっています。
電子カルテを利用すると、必要な情報をすぐに振り返ることができ、担当者が変わってもサービスの質をそろえやすくなります。
施術履歴を元に次回の調整もしやすくなるため、提案の幅が広がり、お客さまに安心して通っていただける環境づくりにもつながります。

美容室でDXを定着させるための失敗しない進め方

美容室にDXを取り入れると、業務効率の改善やサービスの質の向上に大きく役立ちます。
ただし、ツールを導入するだけでは効果が実感できず、「使いこなせない」「続かない」といった課題が起きることもあります。
ここでは、
- 現状の業務整理
- DXの優先順位づけ
- スタッフを巻き込む方法
これらの3つの視点を軸に、具体的な進め方を見ていきます。
現状の業務と課題を整理する
DXをうまく進めるためには、まず「どこに時間がかかっているのか」「どの作業が負担になっているのか」を把握することが大切です。
業務の流れを一度見直すだけでも、必要な改善ポイントが見えやすくなり、導入するシステムの方向性も定まりやすくなります。サロンの毎日の業務では、予約対応、施術、会計、カルテ記入など、作業の進め方が人によって違うことがあります。
たとえば、カルテの書き方や予約管理の手順がスタッフごとにバラバラだと、引き継ぎに時間がかかったり、確認漏れが起きやすくなります。
業務を棚卸しする際に役立つ視点として、次のような項目があります。
- どの業務に一番時間がかかっているか
- ミスが起きやすい作業はどれか
- スタッフ間で作業のやり方に差がある部分はどこか
- 顧客対応で「もっとスムーズにしたい」と感じている場面はどこか
こうした視点で現状をチェックすると、改善が必要な箇所が自然と見えてきます。
DXは「便利そうだから導入する」のではなく、「実際に困っていることを解決するために導入する」という流れで進めることが重要です。
優先順位を決めてDXに取り組む
DXを進めるときは、あれもこれも一度に変えようとすると大変です。
まずは「どの作業から直すと一番助かるか」を決めることが大切です。順番を決めて取り組むことで、現場の負担を増やさず、ムリなく進められます。
優先順位を考えるときは、次のようなポイントを見ると分かりやすくなります。
- 時間がかかりすぎている作業
- ミスがよく起きてしまう部分
- スタッフが大変だと感じている作業
- お客さまから「使いにくい」「分かりにくい」と言われやすい場面
たとえば、予約の確認で長い時間を取られているサロンなら、予約管理システムを入れると負担が減ります。レジ締めに毎日時間がかかっているなら、POSレジを導入すると一気に楽になります。
このように「どこを変えるとすぐ効果が出るか」を考えると、自然に取り組む順番が見えてきます。
スタッフを巻き込んで定着させる
DXを成功させるためには、システムを導入するだけでなく、スタッフ全員が「使える状態」になることがとても大切です。
どれだけ便利なツールでも、現場が使いこなせなければ効果を感じにくくなってしまいます。導入から定着までの流れを整えることで、ムリなく活用できる環境がつくれます。
まずは、新しい仕組みを導入する前に「なぜ必要なのか」をスタッフと共有することが重要です。予約の管理が楽になる、カルテの確認が早くなるなど、具体的なメリットが分かると、協力を得やすくなります。
また、使い方を覚える時間をあらかじめ確保したり、説明会を行うことで、不安が少なくなり使い始めやすくなります。導入後は、スタッフ同士で操作方法を教え合ったり、小さな疑問をすぐに相談できる場をつくると定着しやすくなります。
誰かひとりに任せるのではなく、全員で少しずつ慣れていくことがポイントです。分かりやすいマニュアルや、チェックリストがあると、迷ったときにも安心です。
サロエボで美容室のDXを現場に定着

サロエボは、予約・売上・カルテ・販促など、サロン業務をひとつにまとめて管理できる美容室向けPOSシステムです。
ツールが分かれて使いにくい場面を減らし、毎日の業務をスムーズにします。
| 分類 | 主な機能 |
|---|---|
| 予約管理 | Web予約、予約一元管理 |
| 売上管理 | 売上自動集計、スタッフ別実績管理 |
| カルテ管理 | 手書き電子カルテ、顧客情報管理、同意書管理 |
| 販促機能 | 販促アプリ、CRM、ポイント管理、プッシュ通知 |
かんざしとの連携で予約業務を効率化
かんざしは、さまざまなサイトから入る予約をひとつにまとめて管理できる予約一元管理サービスです。
インターネット予約、電話予約、自社サイトの予約まで、すべてを同じ画面で扱えるため、予約の重複や確認漏れを防ぎやすくなります。
サロエボと連携すると、予約に関する作業がさらにスムーズになります。
予約の一括管理
外部サイトの予約が自動で取り込まれ、編集した内容もかんざし側に反映されます。
シフトの一括設定
営業時間やスタッフの出勤状況をかんざしでまとめて管理できるため、空き状況の確認が分かりやすくなります。
予約がすべて整理されることで、ダブルブッキングを防ぎやすくなり、スタッフは施術や接客に集中できます。複数の予約ルートを使う美容室にとって、負担を大きく減らすことができます。
予約を一元管理できる予約管理システム「かんざし」
ビューティーパレットとの連携で顧客情報を一元化
ビューティーパレットは、美容室だけでなく、エステ・ネイル・まつげエクステ・整体サロンなど幅広いサロンで使われている顧客管理サービスです。
サロエボと連携すると、顧客情報の整理がしやすくなり、紙カルテでは難しかった管理もスムーズになります。
連携によって改善しやすいポイントは次のとおりです。
顧客データが自動反映
ホットペッパービューティーのプロフィールや来店履歴がサロエボ側に自動で取り込まれ、確認の手間が大きく減ります。
紙カルテより管理が簡単
保管スペースが不要になり、10年・20年前のカルテでも劣化の心配なく保存できます。検索もすぐにでき、受付状況と連動するため探す手間がありません。
手書きの電子カルテが使える
タブレットに直接書き込めるため、紙カルテのような感覚で情報を残せます。絵やメモで細かいニュアンスも共有でき、スタッフ間の引き継ぎが正確になります。
市販タブレットで利用できる
専用端末が不要なため導入コストを抑えられ、手持ちのタブレットでも使いやすい設計になっています。
ビューティーパレットとサロエボをつなぐことで、顧客情報・来店履歴・カルテ・受付状況までリアルタイムで確認できるようになり、サロン全体のデータ管理がシンプルになります。
入力した内容はPOS側にも反映されるため、サロンワーク全体の流れがそろいやすくなる点も大きなメリットです。
美容室・サロン専用の電子カルテ「ビューティーパレット」
まとめ
美容室のDXは、予約や売上、カルテ管理などの作業を効率化し、スタッフが施術に集中できる環境を整えるための取り組みです。
負担の大きい業務から順に見直し、現場が使いやすい仕組みを選ぶことで、ムリなく定着していきます。
サロエボのようにデータをまとめて管理できるシステムを導入すると、毎日の作業が整理され、サロン全体の動きがスムーズになります。
かんざしやビューティーパレットとの連携を活用することで、予約管理や顧客情報の確認もより簡単になります。慌ててすべてを変える必要はありません。
できるところから着実にデジタル化を進めていくことで、サロンの働きやすさも、お客さまの満足度も、確実に高まっていきます。
